職場において女性特有の疾患に関する認知度は低い
毎月のつらい月経痛や月経前症候群について、課長や係長に相談していますか?
中間管理職である課長や係長はまだまだ男性が多いので、相談しにくいでしょうか?
それでも、そのつらさは、相談しないと伝わりません。
今回は、男性中間管理職が女性特有の疾患についてどれくらい知っているかを調査した研究をご紹介します。
働く女性の健康に関する調査
少し古いデータですが、2004年に厚生労働省からの委託を受けた「財団法人女性労働協会」が調査したデータを少しご紹介します。
・月経痛を感じている人は約75%
かなりひどい痛みがある人とひどい痛みがある人をあわせると約30%。
我慢できる程度の痛みがある人を合わせると約75%の人が痛みを感じている。
ほとんどの人が市販薬の鎮痛剤を服用して対処している。
・子宮内膜症と思われる症状がみられた人は32%
ストレスとの因果関係がかなり強いといわれており、近年産婦人科の受診数が増加傾向にある。
・月経前の不調を感じる人は約63%
不調を感じていても市販薬等で対処しない人がほとんど。
・更年期障害の症状を感じている人は約70%
症状を感じていても40%ほどの人は何も対処していない。
産婦人科やそれ以外の科を受診している人は40%弱
かなりの女性が女性特有の不調を感じていることがわかりました。
しかし、産婦人科や婦人科の受診も低いことから、痛みや不調が当たり前のことであると考える女性が多いのかもしれない。
女性特有の疾患に対する男性女性中間管理職の認識差
次に2017年にされた研究のご紹介です。
女性特有の疾患に対する男性中間管理職と女性中間管理職の認識の差
大企業や銀行、スーパーマーケットなど様々な職種の男性中間管理職796名、女性中間管理職232名へのアンケート調査結果です。
一般的な疾患との認識差
胃がんや大腸がん、高血圧やメタボリックシンドロームなどの一般的な疾患については男性中間管理職も女性中間管理職も約90%の割合が「知っている」と回答
一方女性特有の疾患(子宮筋腫、子宮内膜症、更年期障害など)を知っているか尋ねると・・・
・更年期障害を「知っている」と回答
男性中間管理職:76.3%
女性中間管理職:97.4%
・子宮筋腫を「知っている」と回答
男性中間管理職:58.5%
女性中間管理職:96.6%
・子宮内膜症を「知っている」と回答
男性中間管理職:34.8%
女性中間管理職:92.7%
男性中間管理職は女性特有の疾患をあまり知らないという結果がわかりました。
月経関連症状に関する認識差
月経に関する不調を感じている女性は70%ほどいますが、月経関連に関して男性中間管理職はどのくらい知っているのでしょう。
・月経痛を「知っている」と回答
男性中間管理職:54.8%
女性中間管理職:96.1%
・月経困難症を「知っている」と回答
男性中間管理職:10.3%
女性中間管理職:65.1%
・月経前症候群を「知っている」と回答
男性中間管理職:7.3%
女性中間管理職:71.1%
働く女性のうち70%ほどの方が毎月嫌な思いをしている月経関連の症状について、男性中間管理職の認識はかなり低いことがわかりました。
これにおいては、女性中間管理職も認識が高いといえば高いですが、同じ女性でも痛みがないと月経関連の不調に対して認識がない方もいらっしゃるということがわかります。中間管理職まで昇る女性は月経に関する不調が少ない可能性がかなりありますので、疾患に対する認識より低下するのはうなずけます。
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なぜ男性中間管理職は女性特有の疾患への認識が低いのか
相談をされないからではないかと考えています。
相談をされなければ知る由もないのは当然だと思います。
上司が男性だと、女性特有の疾患や不調について相談される機会が少ないのではないでしょうか。
男性から女性に聞くとセクハラと思われても嫌ですし、動きにくいですよね。
かといって女性からも、自身の女性的な部分を出すことを嫌ったり、どのように切り出したらいいかわからず相談できないということがあるかと思います。
しかし、つらいまま仕事をするのは生産性も落ちますし、何より生活の質が下がってしまいます。
勇気を出して相談してみるのも手だと思います。
管理職の方も、「女性的なつらさとかがあれば言ってね。いってくれないとわからないから」と相談しやすい環境にしてあげるほうがいいような気がします。
相談して、相談されて初めて、「女性にはそんなことがあったのか!」と知る上司さんもかなりいらっしゃるでしょうし、中には配慮してくださる方もいらっしゃるかもしれません。
歩み寄らないと一生理解しあえません。
おわりに
働き方改革において、多様な働き方が重要視されてきています。
介護や出産、育児など大きなライフイベントに目を向けられがちですが、女性特有の不調を抱えたまま働いている方が大勢いらっしゃることを考えることも、多様な働き方を許容することの一つだと考えています。
女性も、毎月の不調を“当たり前のこと”と処理せず、産婦人科や心療内科など受診して調整していくことが大事ですし、男性はそれを理解、許容することが大事だと思います。
許容するためには歩み寄り、歩み寄りにはコミュニケーションが重要です。
中間管理職の皆様、今日、部下何人に声を掛けましたか?
思っていること、考えていることは表現しないと相手には伝わりません。
みんなにとって働きやすい社会になりますように。